鞄に二冊

少しでも空き時間ができると、本が読みたくなる。

「リングにかけろ」の不思議(その2)

リングにかけろ」は名作中の名作だと思っている。その名作ぶりについては機会を改めて語りたい。本作は細かい粗探しをし始めたらきりがないが、それでも気になることがある。それは、河井武士はなぜ孔子になったのか、だ。

河井はチャンピオンカーニバルで準優勝すると、以後、日米決戦、影道決戦、世界大会、さらに十二神戦と、何年にもわたり「黄金の日本ジュニア」の一員として、主人公らとともに命懸けの戦いを続け、友情を育んでいく。

その河井は、実は阿修羅一族であることが判明。孔子と名を変え、阿修羅一族の悲願であるカイザーナックル奪取を果たすため、高嶺竜児に戦いを挑むことになる。が、自分のために命懸けで阿修羅一族と戦う高嶺を見て、「僕は孔子ではない、河井武士だ」と叫ぶ……

河井が阿修羅一族を裏切って、再び高嶺らと心を一つにするシーンは感動すべきところなのかも知れないが、「それはないだろう」と思ってしまう。そもそも河井は、なぜ阿修羅一族に従うことにしたのだろうか? 血のつながりは何より大事と考える昔気質の人だって、それは育ててもらってこそであって、会ったこともない人が突然やってきて「あなたは阿修羅一族の血を引いています」と言ってきたところで、たとえそれが事実であれ、素直に従うとは考えにくい。まして現代っ子であれば、「そんなことは知らないよ~」で終わりなのではないか。

これが実はトヨタの社長の隠し子で役員として迎え入れたいとかいう話なら、ことと次第によっては乗るかも知れないが、親友の高嶺竜児を倒して(殺して、ということか?)カイザーナックルを奪い取れ、と言われたら、即答で「否」だと思うのだ。

もともとは全編を通じて最大の謎であった。ただ、これに対する回答が「リングにかけろ2」で示された。なるほど、そうした事情があったというなら納得がいく。さすがに作者も、これは無理があったな、と思い、補足説明の必要を感じたということだろうか。そういう意味では解決済みではある。しかし、本作品中に示されてはおらず、本作のみで検討するならば、大きな謎だと思うので示しておく。


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