鞄に二冊

少しでも空き時間ができると、本が読みたくなる。

「リングにかけろ」の不思議(その1)

1977年~1981年に少年ジャンプに連載された作品。ジャンプコミックス全25巻が発行されたが、絶版(現在入手可能な「リングにかけろ1」は大幅な改作が施されたもので、正直なところ、同一作品とは認めたくない)。

1977年~1981年といえば自分の高校時代とすっぽり重なる。連載を楽しみに読んでいた漫画は数多くあるが、ここまでのめりこんだのはあとにも先にも本作のみである。読めば読むほど熱くたぎるものがあった。この年齢になって漫画の生涯ベストを考えた時に、本作がランキング入りするのは間違いない。

当初は真面目なスポ根漫画だったが、途中から大きく路線変更している。初期の、継父によるDVや、家出して上京、三条家のお世話になるも再び家出するくだりなどは、なかなか読んでいてつらいものがあった。また、素人にボクシングを教えるとなると「あしたのジョー」をなぞるしかなく、実際、菊が竜児にボクシングを指導する場面では、酷似するシーンもある。この路線を続ける限りは面白い作品にはならなかっただろう。

変更後のストーリー展開に関しては、一緒になって燃えて行けばよくて「いいんだよ、細けえことは」ではあるのだが、それでも気になって仕方のないことがいくつかある。

個人的に最大の不思議は、香取石松がボクシングをやめた理由だ。志那虎一城や河井武士がボクシング界から去った理由も不思議ではあるが、本人が自分で決めたことなのでとやかくは言うまい。が、石松の場合は首をかしげるしかない。

剣崎順が世界タイトルマッチを行なう日、好きな相手を取られた嫉妬で剣崎に襲い掛かるも、負けてしまう。その後、竜児にボクシングから足を洗うと告げるのだが、その理由は「剣崎や竜、おめえたちみたいなのがいるんじゃしょせん一番星にゃなれやしねえ」からだというのだ。

剣崎や竜児と石松とでは体格が違う。剣崎と竜児がバンタム級のタイトルを争うなら、石松はフライ級の世界チャンピオンを目指せばいいのではないか? チャンピオンカーニバルや日米決戦、世界大会が体重無差別の大会だったため、ボクシングは本来体重制であることをすっかり忘れてしまったのだろうか?

母親の借金を網元に「チャンピオンになって返す」と言い続けてきたが、借金がどのくらいあったのかはわからないが、漁師を継いだのでは返済は厳しかっただろう。


漫画・コミックランキング