鞄に二冊

少しでも空き時間ができると、本が読みたくなる。

「海街Diary」5

午前中に出かけたついでに書店に立ち寄って入手。前回(4巻)の時は(購入した書店では)死ぬほど平積みしてあったが、今回は2山のみ。いまどき2山、平積みされるだけでもすごいと思うけど。

移動中、さっそく読む。

第一章「彼岸会の客」では、すずは亡き母の妹(すずの叔母)と称する人物と会う。すずのお母さんの家の話はこれまで出てこなかったが、一度も会ったことがない(会いに来てくれない)くらいだから、漠然と自分は嫌われているんだろうと思っていたが、そうではなかった。事情があって縁を切っていたけれど、実はみんなすずのことを気にし、心配していたのだ。

すずのお母さんは言ったそうだ。「私は浅野さんの家族から夫と父親を奪ってしまった そのうえすずという宝物まで授かったから これ以上もらうわけにいかない」と……「すずという宝物」だと言ったのだ。それだけでもぐっとくるのに、その叔母さんが肝心な時に力になってあげられなかったことを詫びると、すずは言うのだ。「大丈夫です あたしにはお姉ちゃんたち……いるし お母さんのこともちゃんと聞けたから でも できればもう少し お母さんといろいろ話したかったかな……」で涙腺が緩んで止まらなくなる。昼間っからどうするんだよ。

第二章「秘密」ではまたしてもアライさんがやらかしてくれて大笑い。一度も顔が出てこないアライさんだが、第一巻からのレギュラーで強烈な存在感を放つ。この章も重たい話だけどギャグが明るく吹き飛ばす。吉田秋生はギャグのセンスも抜群だ。

ところでよっちゃん(香田佳乃)は同僚の「えびす」さんのことを好きにならないように意識してセーブしているようだが、なぜなんだろう。よっちゃんは今はフリーでえびすさんも独身。お互いに酒飲みであることもバレたし、お似合いだと思うけどな。恋愛はこりごりということなんだろうか。

第三章「群青」では……この章では風太がカッコいい。裕也もカッコいいし、将志も意外に(失礼)カッコいいが、ここでは風太がぴかイチ。すずが好きになるのも納得だ。ただ、自分の中学時代を振り返ると、中学生ってここまでカッコよかったかな、と疑問も感じる。もっと幼く、もっとみっともなかったような。高校生くらいになると、男も女も、カッコいい奴はカッコよくなるんだけど。自分を基準にしてはいかんか。

山猫亭の店長は、おばちゃんかと思ったら男だったんだね。第二章で海猫食堂の店長との掛け合い漫才は友達どうしのそれかと思ったが、男女の会話となるとまた意味合いが変わってくる。

人の生き死にもある、重たい章だが、アライさんがまたやらかす。

よっちゃんはまたえびすさんに惚れかかる。最終的にはくっつきそうな気がするが。というか、くっついてほしい。この物語では、あまり幸せな恋愛をしている人がいないから。あ、チカとアフロ店長も幸せカップルなのか?

第四章「好きだから」では、なんと長女の幸の胸にしこりが。ちょっとちょっとやめてよぉぉー。ネタバレになるから、気になる人は買いましょう。大阪のオバチャンの飴ちゃんの話は良かった。幸がヤスを飴代わりにするのも、昔の幸だったら決してしなかっただろうが、ちょっと人間が丸くなった証のような気がしてほっこりしたし、自分も誰かの飴ちゃんになりたいと思うところもよかった。

そしてまたアライさんが、実はなかなかの人物であったことが明かされるとことも興味深い。遠景ではあるがアライさんの容姿が描かれる。これは初めてではないのかな。

全体として、吉田秋生は絵がうまく、絵で十分語れる人だと思うのだが、セリフが詰め込み過ぎで、そこだけちょっと残念だ。しかし、漫画史に残る傑作を読んでいる手応えを感じる。