鞄に二冊

少しでも空き時間ができると、本が読みたくなる。

「シロマダラ」(再)

少し前に、ヒリヒリする漫画が好きだと書いたが、ヒリヒリする代表格が、この作品。これほどヒリヒリする話はちょっとほかに思いつかない。

ヤクザが絡めばヒリヒリするかというとそういうわけでもなくて、ヤクザが主人公の漫画はいろいろ持っているけど、それぞれにまた別種の面白さがあるのだけれど、ヒリヒリするわけではない。

この作品は、あの時期の小林まことにしか描けなかったのだと思う。だから仮に連載を続けていたとしても、結局面白いのは1巻だけ、ということになった可能性は十分ある。恐らく続編を望む声はあったと思うが、これに答えなかったのは、作者自身もそれがわかっているからだろう。

ただ、この作品を描くことによって、「こういう話が描きたい」という気持ちが抑えられなくなってしまったのは残念だった。「1・2の三四郎」はギャグ漫画であって、最後までそれで通してくれればよかったと思うのだが、「シロマダラ」の連載を中断してから「1・2の三四郎」のシリアスパートが増えだした。お姉さんの元婚約者の話くらいはまだしもとして、お父さんが登場したり、妹が出てきたり、洒落では済まない話を絡めだして後半は支離滅裂になってしまった。

そうしたことも漫画家としての経験だったのかも知れない。その後「柔道部物語」、「1・2の三四郎2」と、どんどん話のまとめ方がうまくなっている。ポイントは「余計な伏線を張らない」ことだろう。

それにしても(何度も書くが)「シロマダラ」の単行本未収録分を、販売してもらえないものか。電子書籍なら十分対応は可能だと思うのだが。世紀の名作をこのまま埋もれさせるのはもったいない。