鞄に二冊

少しでも空き時間ができると、本が読みたくなる。

「海自オタがうっかり「中の人」と結婚した件。」1

  • たいらさおり「海自オタがうっかり「中の人」と結婚した件。」1(秀和システム

2015年2月刊行。電子版は2015年4月刊。kindleだとさほど意味のない区別になるが、これは書籍扱いのコミックスだと思う。このような不思議な区分がいつから発生したのかは定かではないが、市民権を得たのは「ダーリンの頭の中」以降だと考えている。書店ではコミックスのコーナーになくて探しにくいとか、概して高いとか、いろいろ言いたいことはあるのだが、本作とはとりあえず関係ないので略。

広告で見ておもしろそうだったので買ってみた。タイトル通り、海自オタだった作者が、海自の基地イベントで出会った男性と結婚し出産するまでを綴ったエッセイ漫画。

あることを「好き」であるというのは別に恥ずかしいことではないが、「オタ」となると、それは隠しておきたい性癖である、という考えがまず前提になっている。実際には両者の区別は曖昧であり、作者はどういう点で自分が「オタ」であると認識しているのかはわからない。オタ属性がある人ならわかるだろう、というつもりのようだが、同人誌ではないのだから、その説明は必要だろう。意味のない壁を自分で作って壊すのに四苦八苦しているだけのように、自分には思える(作者は最初はオタであることを隠して付き合っていて、それを告白した、というのが山場になっているが、自分の職業が好きだと言われて怒る人はいないと思うのだ)。

それから、これは恋愛漫画ではない。作者が中の人に惹かれた様子はわかるが、相手がなぜ作者と付き合うようになったのか、最初にデートすることになった経緯こそ大事だろうと思うが、それについては触れられない。いつの間にかデートする間柄になり、いつの間にか結婚を意識するようになっている。キスシーンはおろか、手をつなぐシーンもない。それを期待すると裏切られる。

奥付を入れず151ページだが、実は漫画作品は123ページまで。その後「特別リポート」として聖地訪問の様子が描かれるが、夫さんは登場せず、一応漫画形式になってはいるものの、文章と写真が多く、絵はわずか。さらに砲雷長へのインタビュー(7ページ、文章中心)にあとがき(2ページ、文章のみ)。これを面白いと思って隅から隅まで読む人と、飛ばす人に分かれるだろう。自分は後者。

漫画自体は、決して面白くなくはない(ラブシーンがないのはマイナスポイントではない)ので、誠実に、漫画作品として昇華させるように努力してくれたらいいと思うが、書籍扱いなのだから文章がたくさん入っても文句を言うなよということだろうか。

価格が通常のコミックスのように5~600円だったら、続けて買うと思うが、その倍近くするのにこの内容だと、1巻でいいかな……



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