鞄に二冊

少しでも空き時間ができると、本が読みたくなる。

「初恋さがし」

2019年5月20日刊。連作短編集。全七話。一話から六話までは小説新潮2013年~2019年に掲載、最終話は書きおろし。

連作短編集というより、すべてがつながった長編とも取れる。いつもの真梨幸子の手法であるが、掲載誌を見て意外な気がした。こんなに間隔が空いて、読者はついて来れたのだろうか。もっとも、第一話、第二話は主人公と舞台設定が同じなだけで、独立した話である。それでも、それ以降も半年に一度程度の掲載。雑誌連載時はただの短編として読み、単行本で読んで初めてつながった話だと認識する、ということだろうか……

ミツコ調査事務所(いわゆる興信所)に持ち込まれる様々な「人さがし」と、それに対応する所長・山之内光子の物語。

興信所の仕事の大半は浮気調査で残りの半分は人探しだと聞いたことがあるが、それを知った時は不思議な気がしたものだ。連絡先のわからなくなった古い友人や、初恋の人の行方を知りたい、できれば会いたい、という気持ちはたいていの人が多かれ少なかれ抱くものであろうが、普通は思うだけである。そこに大金を投入するとなると、ピュアな気持ちよりも何か具体的な目的があると考えた方がいいのではないか、そしてその「目的」は、探される人にとっては至極迷惑なこともあり得るのではないか……と思ったのだ。

本作では、その「至極迷惑なこと」が描き出されている。登場人物はイヤな性格が多く、魅力的な人はほとんどいないが、読んでいてイヤな気分にさせられる、ということはない。真梨幸子だからといってすべてをイヤミスに分類するのは疑問である。

それにしても、主人公であるはずの山之内光子が第五話で死んだのは驚いた! 裏があるのかと思ったが本当に死んでいた。主人公が途中で死んでしまうミステリーは斬新だわー。



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