- 亜月亮「汝、隣人を×(バッ)せよ。」3
「一生一殺法」はいろいろと批判もあるようだが、これが施行されてから、職場でのパワハラ、セクハラ、学校でのいじめ、家庭内DV問題は激減したそうで、外国でもこれを取り入れるところが出てくる……
2巻でも触れられたように、意外と穴の多いこの法制度だが、3巻では次の事実が示される。
- 殺益権は譲渡できる
- 本来は殺益対象にならない人も複数の殺益申請が集まれば殺益となる。これにより不祥事を起こした政治家やブラック企業のCEOなどにも適用が可能になる
- これまでは殺益申請が受理されても、対象者が海外に移住すれば殺益実行はできなかったが、その国が「一生一殺法」を適用されれば国家間で対象者の引き渡しまたは現地での執行が可能になる
1は、作品内では描かれていないものの、問題が生じるだろうことはすぐに想像がつく。金銭による売買は禁止されているというが、暴力・権力その他、取り上げる方法はいろいろある。本来は弱者を守るためのものだったが、それが逆転しかねない。
2は、作品内でも悪い噂を流された大臣が殺益されるシーンが描かれたが、こんなことがまかり通れば有名人はみな枕を高くして寝られないだろう。
終盤、「こんな狂った法律が支持されるなんて日本は終わりだな」と外国人に言われるが、諸外国でもこの法を取り入れるところがどんどんでてくる……というところで終わる。
結局、システムが暴走し、自己崩壊を起こし始めたということだ。なんという救いのない終わり方だ。こんなヒリヒリする話があっていいのか(褒めてます)。
ただし、こういう終わり方をした以上、続編は期待できない。3巻の前半までのレベルの話がもっと読みたかったが。同じ作者の他作品に期待だ。