鞄に二冊

少しでも空き時間ができると、本が読みたくなる。

「北斗の拳 世紀末ドラマ撮影伝」4(新刊)

  • 倉尾宏「北斗の拳 世紀末ドラマ撮影伝」4(ゼノンコミックス)

2023年5月19日刊。

ジャギを倒し、北斗兄弟編はいよいよ佳境へ。次はトキ。トキはギャギと違い、ケンシロウと後継者争いをしたほどの腕前であり、その残虐さも一桁上。つまりわれわれがアミバとして知る人物は、もともとトキとして描かれていた。ところがトキ役の役者の事務所から、殺さず準レギュラーとしてこのあとも出演させ続けてほしいと言われてしまったため、現場は大騒ぎになる。いろいろな力関係から、この「お願い」には逆らえない。

結果、この人物はトキに成りすましたアミバだということになり、本物のトキは善人でケンシロウに味方する人物ということになった。レイが「トキではなく、アミバだ」と正体をバラした途端に弱くなり、それまで歯が立たなかったはずのケンシロウが圧倒するようになることや、トキであることを示す証拠だったはずの背中の傷や、若い頃の修業時代の記憶などは、「天才アミバ異世界覇王伝説」で茶化されているが、本作では急遽設定が変わったためだと説明されることになる。

原作には様々な矛盾があるが、そうした矛盾を生んでしまう「背景」は、実はこうした事情があったのではないか? とする設定が見事である。「北斗の拳」には実に多くのスピンオフ作品、パロディ作品があるが、その中でも群を抜いて優れている。

これまで全く名が出てこなかったラオウが、この時以降、緻密に描かれるようになったのは、ケンシロウと後継者争いをしたほどのトキがケンシロウと組んでラオウに向かうのだとしたら、ラオウは相応の人物でなければいけない、という判断だったという。

一子相伝と言いながら、ケンシロウが正式に伝承者になったあとも、ラオウ、トキが無事であった理由についても、説明されるかな~。



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