鞄に二冊

少しでも空き時間ができると、本が読みたくなる。

「セレブ刑事」3(最終巻)

  • 小林薫「セレブ刑事」3(ビークリー)

オリジナルは2009年6月20日刊、LGAコミックス。kindle版は2016年3月25日刊。

城崎久乃刀自(きのさき・ひさのとじ)が危篤となり、城崎グループの会長代行となった永遠子は、目の回るような忙しさで、警察の仕事も休まざるを得ず、有馬とも一緒にいられなくなった。有馬と永遠子は、互いに住む世界が違うことを改めて実感。心の中で別れを告げる。

一方、連続殺人事件が起き、警視庁では皆目手がかりをつかめずにいた。被害者は増える一方。有馬はついに永遠子に泣きつく。力を貸してくれと。永遠子は、この事件を最後に警察を辞めることを伝え、私財をはたいて被疑者を確保する(この時の私財のはたきかたは想像を絶するもので、本作の見どころでもある)。

その後……

ネタバレになるが、久乃刀自は自分の死後も遺産は相続させず、永遠子を勘当すると遺言書に記していた。「この子はどこででも生きていける子です。城崎グループの皆さん、この子を開放してあげてください」と――

私財を使い切ってしまい、遺産も受けられず、着の身着のままとなった永遠子は「行くところがなくなってしまいました……」と有馬をもとを訪れる。もちろん有馬はそれを受け入れる。まさかこうした結末になるとは思わず、これも見事だった。

永遠子は贅沢がしたくて贅沢をしている人ではなく、有馬の給料で暮らせと言われればそれができる人なのだろう。ただ、容姿端麗・成績優秀・語学堪能・スポーツ万能であるだけでなく、ジェット旅客機に戦闘機の運転もでき、SATが手を挙げた最新の時限爆弾を解除することもでき、世界各国のVIPと顔がつながる永遠子を一介の主婦にしておくのは、国家的損失だなあとは思うが。