鞄に二冊

少しでも空き時間ができると、本が読みたくなる。

「R20 -罪と罰-」

短編集。表題作のほか、「イミテーションブライド」「ストックホルムシンドローム」の合計三編所収。2018年5月30日刊。

「葬儀屋事件簿」の期待を裏切らない傑作。「葬儀屋事件簿」はミステリー(+ちょっとギャグ)だが、本作は本格サスペンス。「本格サスペンス」という言葉があるかどうか知らないが、ちょっと怖いものが出てきてギャーというような「なんちゃってサスペンス」とは一線を画する、人間の心理の奥深いところを抉る作品というほどの意味だ。

表題作には「たとえ法が許しても、私があなたを許さない」というサブタイトルがついている。主人公は天涯孤独の身の上だったが、愛する男性と結ばれることができ、子も生まれ、「家族」というものを手に入れることができた。そんな矢先に交通事故で夫と子が死んでしまう。

人を二人ひき殺した運転手は、17歳であったこと、運転時にシンナーを吸っていて意識が朦朧としていたことから、心神喪失による事故とされ、二年、少年院に入っただけで済んだ。数年後、彼の「家族」と彼を弁護した弁護士が次々と殺されていく……

犯人の側から描いているため、特に謎はないのだが、主人公の心理描写が見事である。結果だけを見れば、なんでこんなことをと思うが、彼女の側から見ると、確かに節目節目で別の選択肢を選ぶべきところを、この道を進まざるを得なかった事情が痛いほどわかる。恐ろしい話である。



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