鞄に二冊

少しでも空き時間ができると、本が読みたくなる。

「大奥御用達四ツ目屋 孕み合戦」

連作短編集、全5編。電子書籍のみ、kindle版は2020年10月29日刊。

前項で、小林薫はオカルトものも描くのかと驚いた、と書いたが、本作を読んで、小林薫は女性のヌードや性交も描くのかとまた驚いた。

歴史オカルトサスペンスの変種とでも言うべきか。

舞台は大奥、時代は文政、将軍でいえば11代家斉公の頃。大奥には多くの女性がいるが、基本は大奥から出ることは許されないため、飢えている女は少なくない。そんな女性のために、御年寄筆頭・大崎の命で「四ツ目屋」が出入りすることになった。今でいう「大人のおもちゃ屋」であるが、もちろん、おもちゃだけではなく、媚薬をはじめ、いろいろ怪しげな薬も扱っている。この四ツ目屋に出入りする女を描いたものである。

ストーリーの骨格は「笑ゥせぇるすまん」である。要は、依頼者の望む道具や薬を提供し依頼者は喜ぶが、最終的に依頼者は幸せにならないというブラックな話である。「オカルト」と入れたのは、江戸時代の技術・知識ではできないだろうと思われる薬品が次々に登場するからである。

扱っているモノがモノだけに当然かも知れないが、かなりどぎついシーンも描かれる。が、テーマ自体は人間の欲深さであったり、妬み・嫉みなど、厭らしい心理を描き出している。それは小林薫クオリティである。

「熟れた初蕾」ではお美代が登場。これは「大奥怨霊絵巻」の黒幕だった女である。ちょっと笑った。



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