鞄に二冊

少しでも空き時間ができると、本が読みたくなる。

「現代怪奇絵巻 特別編」

  • 根本尚「現代怪奇絵巻 特別編」(札幌の六畳一間)

2023年10月20日刊。表紙を含め70ページ。初出は主にコミティアで、2009年5月5日~2023年9月3日。

「現代怪奇」の「怪奇」の意は、妖怪とか幽霊とかUFOとかではなく、「一回しか使っていない接着剤が固まって開かない」とか「シャープ芯のフタを開けたままにしフデバコの中で全部折れている」といった類の、誰もが体験したことがありそうな恐ろしい話を並べたものである。よくもこれだけ思いつくものだ。

本作は「特別編」と銘打たれているが、そもそもは「現代怪奇絵巻」という作品が「週刊少年チャンピオン」に2006年~2009年の三年間連載されていた。それは(秋田書店からは)単行本化されていない。作者が自分で書籍化したくても、写植などの権利問題がクリアされていないのだという。別作品で書かれていた説明によると、漫画の原稿自体は作者に権利があっても、写植を打ち、レイアウトしたあとの版下の権利は出版社が持っているから、そのまま自費出版することはできないのだという。

出版社側が単行本で利益を得ようとしているのに、作者が勝手に同じ内容の作品を自費出版などされては困るから、権利に制限をかけるのはわかる。が、連載終了後10年以上経っても単行本化されない(恐らく出版社には単行本を出す気は1ミリもない)のに、権利ばかりを主張するのは納得がいかない。「済みませんね~、ウチは本を出す予定はないんで、ご自分で出したいのならドーゾドーゾ」と言ってしかるべきだ。法律のことはわからないが、読者としてはそう思う。

衆議院議員日本一」では作者が写植から貼り直して自費出版にこぎつけたが、そういえばこの作品は「ミステリーボニータ」に連載されたもの。つまり秋田書店だ。秋田書店はもう少し寛容になっていただきたいと思う。他の出版社がどうなのかは、知らないけど。