鞄に二冊

少しでも空き時間ができると、本が読みたくなる。

ヘビーなヒューマンドラマ

どこの書店に行っても目立つ所に平積みになっている上、よく行く書店ではPOPまで出ていた。作者の名前が発音しにくいし、書名は平凡だが、そんなに面白いのかと気にはなっていた。正直に言うと、POPには「すごくエロい」というようなことが書いてあったため、読んでみる気になった。

抜群に面白い。序盤はともかく、途中からは続きが気になって中断することができず、一気に読んでしまった。

文章力もあるが、物語の展開のさせ方も見事なもので、これが処女作とはとても信じられない出来栄えだ。

ミステリーとしても面白く読めるが、基本的にはミステリーではないと思う。謎解き、意外な結末、が問題なのではなく、結末に到るまでの主人公の心理的葛藤が問題なのだ。とはいえ、「これからどうなるの!?」というハラハラ・ワクワク感は大きな魅力だから、筋書きを書くのはためらわれる。

ラストで、主要な登場人物の一人であるある人が、かなり重大な決意をする。これは、年齢を経た、分別のある大人からしたら、誰もが「なにをバカなことを言っているんだ。そんなの苦労するだけだろう。やめとけ」と言いたくなるような内容である。この人物はどこまで覚悟があってそう決意したのだろう。また、結局この人物は、その決意を実行に移したのだろうか。映画「モールス」のラストを思い出した。オーウェンも若さの勢いで大変な決意をし、それを実行に移してしまうが、その場は楽しそうでも、不幸な人生が暗示されているようで、切ないラストだった。

ちなみに、情事を描いた場面があることはあるが、今どきこの程度でエロいとは思えなかった。そこだけは期待外れ(笑)。

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(2011/12/14)