鞄に二冊

少しでも空き時間ができると、本が読みたくなる。

400年を超えたバカップル「アシガール」11

あらすじ

唯の髪が伸びた。これまではずっと短くしていたが、若君が撫でてくれた髪を切りたくないのだ。これまではまるで男の子みたいで色気も何もなかったが、少し髪の伸びた唯はきれいだ。それに無口でおしとやかな唯はちょっと素敵だ。でもそれは傷心を抱えているためで、本当の唯ではない。

唯は尊にも何も言わない。忠清から(なんとかしろと詰め寄って)尊をいじめるな、と言われたから。

平成に戻って4ヵ月、それでも唯なりに気丈に振る舞ってきたが、奇念が建てたという忠清の墓を目の当たりにした時、ついに我慢しきれず涙腺が崩壊。その涙を見た尊はとんでもない奇策を思いついた。未来の自分が作ったタイムマシンを今この時代に送ってもらうのだ。

ついに唯は戦国に戻る。投降した忠清は相賀一成の下で戦に駆り出されていた。また高山・松丸は織田にくだり、改めて羽木にも追放の処分が下され、野上を出なければいけなくなる。忠清は黒羽城の城主となった相賀一成の養女と結婚し婿(ていのいい人質)にさせられる。唯が戻ってきたのは忠高らが引っ越し移動の最中&忠清の婚儀の日だった。

唯は一笠座のあやめらの力を借り、婚姻の前に地元の舞を披露するふりをして忠清を強奪する。気づいて追いかけてきた相賀一成ら大勢の前でタイムマシンを起動し、唯は忠清とともに平成へ移動する。単に逃げればどこまでも追いかけられ、忠高らも無事では済まないが、皆の目の前で消えてしまえば追いかけようがない。実際、相賀一成は噂が漏れたら大変だと、忠清は急死したことにして事を処理した(黒羽城にて忠清が死んだと後世に記録が残っていたのはこのため)。

忠清を連れて平成に来た唯は、初めて穏やかで楽しい日を過ごすことになる。若君と毎日一緒(家族も一緒だから夫婦としての生活ではないが)。命の心配は金輪際しなくていい。友人にも自慢しまくり(世の女がみな一目で若君に惚れてしまうので、別の意味で穏やかではいられないが)。

しかし、しばし幸福な日々を満喫すると、唯は若君に言う。二人で戦国に戻りましょうと。若君は、戦国時代でないと本当に幸せにはなれないと思うから。

小平太

「若君は……常に殿や周りの者にばかりお心を砕かれて我を通されぬ……お側にお仕えしていて時には歯がゆいほどじゃ……なれどその若君が、唯之助のことだけは殿の反対も松丸への義理も構わず押し切られた」

吉乃

羽木忠高「戻ったの」
天野信近「戻って参りました」
吉乃「あの子が若君の婚礼をだまって見逃すはずがござりませぬ」

雑感

まあ、禁じ手ちゃ禁じ手だよな。前回も、あと一回だけ、と言われていたのに、その後エネルギーをためてもう一往復可能になり、今回はなんと未来からタイムマシンを送ってもらうという。それができるなら何でもアリになってしまうが、尊がこれから先何年も(もしかしたら何十年も)この日のために開発を続けていく、そのくらい、今、この日に、唯が戦国に戻ることが重要なのだと登場人物にも読者にも思える程度には説得力はあるかな。

もう二度と若君に会えないとわかった時の傷心の唯の様子や、再び会えるとわかった時の感情的なふるまい、そして戻ってきた唯を歓迎する羽木の関係者の様子、平成でのバカップルぶり、そしてこれから先の生涯を戦国で生きると決意した唯の覚悟。見どころ満載である。なんとすごい物語であるか。

次巻で(第一部)完か。


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