鞄に二冊

少しでも空き時間ができると、本が読みたくなる。

「よなきごや」

  • かねもと「よなきごや」上(電書バト)

2023年8月15日刊。211ページ。

子どもの夜泣きがやまない。どうやってもやまない。自分も眠れない。その上配偶者から怒られる。居場所がなくなった母子が夜、町を徘徊していた先に「よなきごや」の看板が……。そこは飲み物や軽食が用意され、防音設備の整った寝室も複数ある。ミルクも哺乳瓶もおむつもあってすべて無料で使用できる。店員はいない。朝になると閉まる。夜になると開く……

困っている人の前にぽっと出現するのはオカルトぽい。毎回よなきごやの仕様が少しずつ違うのも興味深いが、焦点は子育てで困窮しているが協力してくれる人も、愚痴を訊いてくれる人もいない親に提供される憩いの場であること。育児に悩む親だけでなく、DV気味の夫にいたたまれず家を出て来た初老の妻も利用した。

利用者が(今のところ)女性だけなのが気になる。夜泣きに苦労する男親も少なからずいるはずだが、今問題なのは家事や育児のたいへんさに無理解な男の存在か。

第一話と二話以降と少し話の傾向が違うなと思ったら、もともとは読み切りのつもりで書いた話が連載化された経緯のようだ。しかも、その間二年が経っているとのこと。なるほど。

上ということは下巻も出るのだろう。楽しみに待とう。