東野圭吾は好きな作家で、一時期は著書を読み漁ったものだ。中でも「×笑小説」というタイトルの毒のあるユーモア短編集が大好きだったが、久々に読み返してみて、面白いことは面白いが、夢中になって我を忘れるというほどではないな、と思ってしまった。嗜好は変わるのだ。
「もうひとつの助走」と「選考会」という、文学賞の選考の裏側を描いたという点で共通する(しかし、オチが対照的な)ふたつの作品が巻頭と巻末でブックエンドになっている。選考される作家も共通する。
Web上のレビュー記事をいろいろ読んでいたら、この「助走」の意味がわからないという人が多く、「昭和は遠くなりにけり」と心の中で呟いた。これは筒井康隆の「おおいなる助走」のパロディになっているのだ。それを知らなくても面白いけど。
初出一覧
タイトル | 掲載誌 | 日付 |
---|---|---|
もうひとつの助走 | 小説すばる | 1999年7月号 |
巨乳妄想症候群 | 小説すばる | 2003年11月号 |
インポグラ | 小説すばる | 2004年1月号 |
みえすぎ | 小説すばる | 2000年3月号 |
モテモテ・スプレー | 小説すばる | 2004年8月号 |
線香花火 | 小説すばる | 1999年9月号 |
過去の人 | 小説すばる | 2005年4月号 |
シンデレラ白夜行 | 小説すばる | 2004年4月号 |
ストーカー入門 | 小説すばる | 1999年11月号 |
臨海家族 | 小説すばる | 2000年1月号 |
笑わない男 | 小説すばる | 2000年5月号 |
奇跡の一枚 | 小説すばる | 2001年5月号 |
選考会 | 小説すばる | 2004年12月号 |