鞄に二冊

少しでも空き時間ができると、本が読みたくなる。

「大家さんと僕」

2017年10月31日刊。「小説新潮」2016年4月号~2017年6月号掲載。

今年の大河ドラマ「光る君へ」でまひろの従者役で出演している矢部太郎が、twitterに「光る君絵」を投稿しており、彼が「大家さんと僕」で注目を集めた漫画家でもあることを知った。それで読んでみることにした。

読んでビックリ。バラエティの企画で部屋を滅茶滅茶にされて追い出された矢部が新たに住むことになった部屋の大家さんとの交流を描いた物語。大家さんは87歳でとても上品な独身のご婦人。お笑いタレントの矢部のことなど全く知らない。

矢部もあまり社交的な性格ではなさそうだが、二人はゆっくりと距離を縮めていく。途中まで読んで、もしかして最後は大家さんが亡くなるのでは、と想像して怖くなったが、さいわい途中で病気入院はするものの、元気で退院し、再びひとつ屋根の下に暮らすことになるところで終わっている。

読み終わった後、大家さんはその後どうなったか猛烈に気になった。この時は元気でも、それから7年経つのだ。そうしたら、2018年8月に亡くなられていることがわかった。本が出たことはわかっていただろうから、このような形で自分のことを世に残してくれたことは嬉しかったのではないか。

今年の大河ドラマは見たら「ご活躍ね」と喜んでくれただろうか。「あらあら矢部さん、今日もまひろさんにおいてけぼりにされちゃったわね」と言うだろうか。


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