鞄に二冊

少しでも空き時間ができると、本が読みたくなる。

「不浄を拭うひと」1, 2:分冊版でないやつ

  • 沖田×華「不浄を拭うひと」1 , 2(本当にあった笑える話)

不浄を拭うひと (2) (comicタント)

不浄を拭うひと (2) (comicタント)

昨年の記事でこの作品を取り上げた時、「分冊版は、試しに読んでみたい人にはいいだろうが、徒らに冊数が増えるのは避けたい」と書いた。その後分冊版を6巻まで購入したところで止めていたところ、その後分冊でない通常版(?)が発売された。これは仕方のないことかも知れないが、腹の立つことでもある。

その上、確認してみると、通常版の1巻は分冊版の6巻の途中までが掲載されているのである。つまり、分冊版を6巻まで持っている自分は、通常版の1巻はすべて持っていることになるので不要だが、つい先日発売された通常版の2巻を買うと、重複が出てしまうのである。

なぜこのような編集にするのか。通常版の1巻は分冊版の1~5巻と同じ、2巻は分冊版の6~10巻、というように、辻褄を合わせるべきではないか。

誰が悪いのかわからないけど、この作者やこの作品が好きだからこそ、早くから買っていたファンが割を食うというのはなんとかしてほしいもの。ついでにいえば、分冊版の価格は高過ぎる。通常版の1巻が分冊版の1~5巻と同じだとするならば、価格も同じにすべきだ。

「ちゃんと描いてますからっ!」1

かすかに読み覚えがあったので購入。

平原大地は月刊誌に連載のあるひとかどの漫画家であるが、実は毎回、下書きだけまたはネームだけ作って逃亡してしまう。逃亡した後はどうなるかというと、仕方なく、中学生と小学生の娘(歩未、空)が二人がかりでペン入れをして仕上げるのだ。原稿が落ちると収入がなくなり、生活できなくなると思っているから(事実、その通りなのだろうが)。娘たちの母親はいない。離婚か死別かは不明だが、だから彼女らは家事もやらなければならない。

一応、あかねちゃんという平原大地を崇拝しているアシスタントがいて、彼女は事情を承知しており、ペン入れの段階になると背景などを手伝うだけでなく、料理・洗濯などの家事、そして編集者とのやりとりなどを引き受けており、そのおかげで表面上はかろうじて平和が守られている。

そう、編集者は、作家本人がおらず、代理人が仕上げていることを知らないのだ。

なんという漫画か、タイトルも作者名も忘れたが、人付き合いの悪い人気漫画家が急逝してしまい、担当編集者が事実を隠蔽、ストーリーは自分が考え、絵はアシスタントに描かせて連載を続ける……という漫画があった。莫大な印税収入をこっそり山分けしようという意図もあったが、作品を中途半端で終わらせたくないという気持ちもあった。いずれにしてもやっていることは詐欺である。

本作では、家族だから、収入をを騙し取ったわけではないし、作家も少なくとも毎回、編集者と打ち合わせをしてネームを切っている。そして歩未のペン入れや空の仕上げ技術はプロのレベルに達している、ということになっている。この場合、真相を出版社側が知ったらどういうことになるだろう? 

漫画家のことを描いた漫画であるというメタ的な話、平原の作品名が「だびんちゲーム」だったり、いろいろとネタが仕込まれているし、ギャグありろまこめありで、見ようによってはなかなか楽しい作品なのであるが、ちょっと生理的に耐えらえず、1巻でドロップ。

父親が働かず、中学生と小学生が働いて、そのため部活もできず、授業中も居眠りをしてしまったりと、これはもう児童虐待に他ならない。歩未のペンタッチは既に父親を超えているからスゴイ、とか言っている場合ではない。

この先どういう展開が待っているか知らないが、一刻も早く歩未や空が漫画を描かなくてもよくなり普通の中学生生活、小学生生活を満喫できますように。



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「こんなに毎日やらかしてます。」

アスペルガーで、漫画家で」シリーズの第五弾。

単行本5冊が長いかどうかはいろいろな見方があると思うが、月間連載であること、一話完結のオムニバス形式のものであることなどを考えると、かなりの長期連載な気がする。安定の人気があるのだろう。

個々のエピソードに対するコメントは控えるが、ここまで仕事が増えてきたら、誰であろうが管理は大変だろう。自分が同じ立場でもトラブルなく進められる自信はない。

それなりの収入もあるのだろうし、マネージャーもしくは秘書を雇った方がいいのではないかと思う。それで彼女が感じている不便さ、不快さの大半は改善する気がするのだが。


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「とことん毎日やらかしてます。」

アスペルガーで、漫画家で」シリーズの第四弾。

看護師になる前にキャバクラでアルバイトをしていたらしい。看護師(見知らぬ人でも、患者であれば身体に触ったり排泄の手伝いをしなければいけない仕事)の経験があるから風俗の仕事のハードルがあまり高くなかったのか? と思ったが、看護師の前にキャバクラ経験があったわけね。

「毎日やらかしてます。」(最初の本)で登場した以前のルームメイトのYさんとは、その後も付き合いが続いているようだ。それはよかったが、Yさんがなぜ作者と付き合っているのか、作者だけでなく、僕も疑問だ。



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「女の解体新書」

女の解体新書

女の解体新書

2巻と3巻があるようだが、1巻(のはず)の本書には1とはどこにも記載がない。

女性の心とカラダについて解き明かした書である。

毎回カップルが登場し、二人の会話や付き合いを通じて、微妙なオンナゴコロを描き出している。

作者は(恐らく)女性で、絵柄も女性的だが、女性の性愛についての描き方は男性視点だなあ、と思っていたら、本作は「漫画ゴラク」(有名な、大人な男性向け雑誌)に連載されたものなのだそうだ。そういう雑誌から依頼が来たからそういう作品を描いたのか、そういう作品を描く(描ける)人だからそういう雑誌から依頼がくるのかはわからない。

毎回違うカップルが登場するのかと思っていたが、同じ人が何度も登場する。

  1. 亮クン(社会人)とミキ(学生)
  2. 田所理(オサム)と真琴(夫婦)
  3. 望月と咲子(望月の片思い)

おまけにミキと真琴と咲子はみな知り合いだった。狭い人間関係だ……


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「ガンニバル」

ガンニバル 1

ガンニバル 1

モーニングで連載されていた「鳥葬のバベル」の作者・二宮志郎と同一人物らしい(ご本人のtwitterのプロフィールを見て確認)。しかしAmazonで二宮正明を検索しても「鳥葬のバベル」は出てこないし、二宮志郎で検索すると「ガンニバル」は出てこない。「この商品に関連する商品」にもだ。どうでもいい情報は多いのに、肝心な情報はまだまだ足りない。

本作は、山間の村「供花村」に赴任してきた駐在・阿川大悟が主人公である。村人は阿川一家を温かく迎え入れるが、村人が死に、その死因に不審さを感じた阿川がそのことをつぶやくと周囲の顔色が変わる。村には若い人もいるのだが、閉鎖的で、相互監視の目が張り巡らされ、気味の悪いことが次々に起きる……

面白い話だと思うが、村人たちの態度が生理的にダメだ。一話完結で、こういう人たちが相応のむくいを受ける、とでもいうならばよいが、話は壮大だし、善良な駐在さんやその一家が悲惨なことになりそうな予感がビンビンで、ちょっと読んでいられないな、と思った。半分までいかずに挫折。まあ、買いはしたけど中を開く気が起きないという、電子版つんどくも何冊もあるから、途中まででも読み、自分には合わないと判断して読むのをやめたのだから、ましな方だ。

作品が悪いというわけではない。絵がうまくて表情がリアル。だからなおさら受け入れられなかったのだが。



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「書店員波山個間子」

  • 黒谷知也「書店員波山個間子」1, 2, 番外編

書店員 波山個間子 1巻

書店員 波山個間子 1巻

書店員 波山個間子 2巻

書店員 波山個間子 2巻

本当は一冊ずつていねいに感想を書きたいけど、まとめて。

作者の名前もタイトルも聞いたことがなかったし、人物の絵柄も正直なところ稚拙に感じられたが、表紙の背景に描かれている文庫本にうなった。新潮文庫新潮文庫に、岩波文庫岩波文庫講談社文庫は講談社文庫にちゃんと見えるのである。うがった見方をすれば、写真に撮ってコラージュしたのかな、とも思えなくもないが、文字が活字っぽく書いているけれど微妙に歪んでいるから手書きなのだと思う。とにかくものすごくよく特徴をとらえていると感動したのだ。というわけで思わず購入。

内容は期待を裏切らなかった。主人公はAOHIGE BOOKSでただ一人のブック・アドバイザー。本に関して広範な知識を持っており、客の曖昧模糊とした話から的確に何の本かを当てていく。または、適切な本を推薦する。広範な知識と推理力、読書が好きで、本に囲まれて暮らしていること、しかし接客が苦手で客の前で妙にオドオドしてしまうこと。ビブリア書店の栞子をほうふつさせる。「せどり男爵数奇譚」という本も紹介されるので、作者も意識しているのかも知れない。ただし、波山個間子は別に美人ではないし、巨乳でもないし、アルバイトの男子に好かれたりもしない。もちろん店長でもない。

店長は女性で、波山個間子にブック・アドバイザーの肩書を与えた人である。この人の性格がなかなかいい。ちょっと変わった人だけど、波山個間子の能力を生かすにはどうしたらいいか考え、本人にも的確なアドバイスをする。豊富な知識とは裏腹に、世間知らずで幼いところもある波山個間子が、店長の指導もあって少しずつ成長しているところがまたいい。

あっさりした絵柄も内容によく合っており、気にならなかった。2巻で終わりはもったいないが、この手の作品は膨大な下調べが必要で、書くのは大変なのかな。

紙の本は角川書店から刊行されたらしいが、電子版は作者が個人で再刊行したとのこと。出版社がいつまでたっても電子化してくれないたら、個人でこうしたということか? 出版社がもっと電子化に前向きでありますように。



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