鞄に二冊

少しでも空き時間ができると、本が読みたくなる。

「戦国小町苦労譚」4

  • 原作・夾竹桃、平沢下戸、作画・沢田一「戦国小町苦労譚 農耕戯画」4(アース・スターコミックス)

2019年3月12日刊。「デジタル版コミックアース☆スター」2018年9月~2019年2月掲載。原作はライトノベル

信長に問い詰められ、静子は未来の日本から来たことを告白。信長は現代社会について怒涛の質問攻めをし、静子の説明を素早く咀嚼した。その後皆に薦められ酒を飲んだ静子は、酔って醜態を演じてしまう……

静子には馬回りとして可児才蔵、前田慶次が付いた。

その後の静子は、人力田植え機を開発、田植えの手間を劇的に削減。また森勝蔵(のちの長可)の面倒をみることになると、食事を改善して体力をつけさせ、相撲大会で優勝させる。ねじ込み式の水筒をはじめとする日用品の開発に勤しむ。

3巻で、静子の村に迷い込んで間者と疑われた本多忠勝榊原康政・本多正重を連れ再訪。どうも静子に惚れ、嫁にしたいと思い詰めたようだが、静子には気持ちが伝わらず……

ある日商人が現代のバッグを売り込みに来た。どうもタイムスリップしてこの時代に来た現代人は、少なくとも他に二人いるらしい。一人は植物に詳しく(どうも静子の祖父の知人らしい)、一人は人斬りに慣れ、戦闘力が高いらしい……

タイムスリップした人が他にもいた、というのは「信長協奏曲」を思い起こさせる。現代でも関係があったというのは面白い設定かも知れないが、さて、彼らが今後どのように関係してくるのか?



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「キャプテン2」11(新刊)

2024年3月18日刊。

もうひとつの準決勝、明善対お花茶屋は結局お花が勝った。お花は早い回から関係者がいろいろ登場し、谷口とも絡んでいたから、当たるのだろうなとは思ったが、まさかそれが都大会の決勝戦になるとは思わなかった。

先発のイガラシは順調に相手を抑えるが、お花の先発はエースではなく控え投手。その遅い球を墨二は打ちあぐみ、8回までゼロ行進を続ける。8回裏、お花は連打でイガラシを攻め、ノーアウト一塁三塁のチャンスを作る……

速い球ばかりに照準を合わせて練習をしてきたからといって、遅い球の投手を打ちあぐむというのはちょっとリアリティが感じられないが、いい投手だったのだろう。お花茶屋の強みは、とにかく膨大な練習試合を積んで来たこと。そういう経験が生きるような試合展開だとよかったが、ここまで淡々と進んだ印象だ。墨二ははたして甲子園に行かれるのか。

「戦国小町苦労譚」3

  • 原作・夾竹桃、平沢下戸、作画・沢田一「戦国小町苦労譚 農耕戯画」3(アース・スターコミックス)

2018年10月12日刊。「デジタル版コミックアース☆スター」2018年4月~8月掲載。原作はライトノベル

3巻では、静子は戸籍を作り、グレゴリオ暦を採用して広めた。戸籍は、発想はよいが、そう簡単にシステムが出来得るものか疑問だし、暦に関しては都で使っているものと食い違いが生じたらまずいのではないかと思うが、そこは突っ込んではいけないことなのだろう。

また、風邪をこじらせ寝込んでいた奇妙丸(信長の嫡男)に対し、部屋を加湿し、精進料理を食べさせ、回復させる。さらに信長にはストレスの存在を示し、生産性を上げるには健全な環境と適度な休息が必要だと説く(信長はこれを応用し、美濃攻めに当たって敵兵に休息を与えないようにして戦力をダウンさせた)。

数々の功績に対し、静子の町で慰労会が開かれることになったが、ここで静子は天ぷらや温泉卵を作って献上。まさに無双の極みだ。

ある日信長は静子を呼び出し、問う。お前はこの世の者ではない、何処から来たか、と――

「最高のコーチは教えない。」

  • 吉井理人「最高のコーチは教えない。」(ディスカバー携書)

2021年12月23日刊。恐らく最初は2018年10月か11月に単行本が出ている。本書はそれが新書化されたもの。従って内容は2018年のオフシーズン時のものとなっている。吉井が日本ハムファイターズのコーチを辞めたところ。千葉ロッテマリーンズのコーチに就任する前だ。

書店へ行って珍しくスポーツコーナーを見たら、本書が平積みになっていた。そのため、最近出た本かと思い、思わず購入したが、読んでみたら結構古い本だった。

吉井が関わって来た選手たちが、吉井の目からどのように見えていたか、それが吉井がコーチしてどのように変わったのか、具体例がいろいろ読めるかと思ったが、個々人の話はほとんど触れられていない。また、昨年は監督一年目で、バファローズの連覇は阻めなかったものの、二位はまずまずの成績で、その辺りの話も知りたかったが、上述の通り書かれた時代はそれよりずっと前であり、マリーンズの話は全く出てこない。

吉井のコーチング術が優れていることは以前から評判であった。それが体系的に書かれているのが本書である。その内容はスポーツ誌などで紹介されることもあったし、本人のインタビュー記事も読んだことがあり、さほどの目新しさはないが、人を指導したりまとめたりする立場の人は大いに参考になると思われる。

ただ、二言目には「サラリーマンの場合は……」と言及するのは余計なお世話だと思った。

吉井は、日本プロ野球、あるいはメジャーリーグでの体験をベースに、野球に関するコーチングを書けばよかった。会社勤めをしたことがないのに一般企業の例を出すのは不適切である。野球の話を読んで、そこから会社においてはとか、子育てにも応用できるとか考えるのは読者の役割だ。

これは想像だが、著者自身が世の中一般に通じるコーチングの本にしようと意気込んだのではなく、そもそもこの本は著者自身が手書きで、あるいはワープロで一から書いたのではなく、ライターがまとめたものではないかと思うのだが、出版社の意向を受けたライターが勝手に付け加えた部分なのではないか。



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「タイムスリップ・コレクター」

  • 根本尚「タイムスリップ・コレクター」(札幌の六畳一間)

2023年8月27日刊。表紙を含め89ページ。古書編・音楽編を所収。初出は、古書編が2016年5月5日(コミティア116)、音楽編が2016年10月23日(コミティア118)。

その時代にはごく普通に手に入ったが、今となっては入手は極めて困難なもの、というのはたくさんある。あの時のアレが今見たい、ほしい、という気持ちは、年を経た人間であれば、誰でも多かれ少なかれ持っているのではないだろうか。ましてコレクターなら。

そんな思いを叶えてくれる作品である。

タイムマシンが仮にあったとして、過去の世界へ行って買い物をするためには、当時のお金がなくてはならない。現在の紙幣は使えないのだ。古銭商などを回って集めるととんでもなく高価につく。といって、当時の社会へ行って働いて当時のお金を稼ぐのは現実的ではない。いつもここが引っかかっていたのだ。本作でも「古書編」では苦労しているが、「音楽編」では鮮やかに切り抜けている。

「音楽編」では、過去へ行って現代のヒット曲を自作と偽って歌う誘惑に駆られた主人公が、「ロックじゃない」と断念するところがカッコよかった。*1

自分だったら、あの本がほしい、あのレコードがほしかった、ということを思い出させてくれる。「食べ物編」とか「化粧品編」「昆虫採集編」など、構想はあるが描く機会を逸しているという。続編が出たら、ぜひ読みたい。



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*1:かわぐちかいじに「僕はビートルズ」という作品がある。ビートルズが誕生する直前の世界へ行き、ビートルズの曲を自作と偽って順に発表していくというもの(原作・藤井哲夫)。神をも恐れぬ行為とは、まさにこのことを言うのだろう。

「すくらっぷ・ブック」1

週刊「少年チャンピオン」1980年~1982年連載作品。秋田書店版(少年チャンピオンコミックス)は、恐らく1980年11月刊。kindle版(エンペラーズコミックス)は2018年3月23日刊。

当時「少年チャンピオン」は毎週読んでいたが、なんともさわやかな作品が登場したものだと思った。タッチはギャグ系で、描画はシンプルな線なのだが、なぜかすごく色気がある。それに惹かれて夢中で読んだ。

当時はあまり気にしていなかったが、現在読むとジェンダー的にいろいろ気になる。たとえば第一話、四人で音楽室にいるところへオバケ(?)が登場する。イチノが恋人である理美ちゃんを守ろうとせず、気絶してしまったことで責められると、なんで理美ちゃんが悲鳴をあげるのはよくて、イチノが気絶するのはダメなのか? と不思議に思う。

また、坂口が理美に惚れてしまい、猛烈なアプローチを始める。それを「理美ちゃんはイチノの恋人だから」と止めに入るのは晴ボンだ。坂口が理美に惚れるのは仕方がない。イチノではなく俺と付き合ってくれ、と告白するのもアリだ。それが厭なら理美が直接断わればいい。断わってもしつこくするようなら、そこで初めて他人の出番になるはず。

自分の体験的には、中学生くらいはもっとニュートラルというか全体的に中性に近くて、ここまで男の子が男らしく、女の子が女らしくを求められない時代だったと思うが、作中では理美はイチノのガールフレンドではなく「恋人」ということになっている。晴ボンと麻紀ちゃんも、ヒロと美晴、まさたかと唯などもそう。早々にキスをしているカップルもいたりして、かなり早熟な印象を受ける。

男は男らしく、女の子は女の子らしく、そういう魅力を追求すると、ジェンダー問題とかち合うなぁと思う。

それはそれとして、自分は麻紀ちゃんが好きだ。当時も好きだったが、今見ても魅力的だと思う。こういう子と一度付き合ってみたかったな。



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「今日のさんぽんた」8(新刊)

2024年3月12日刊。発売日に即購入。

相変わらず面白い。ほのぼのとした面白さもあるが、思わず声を出して笑ってしまう爆発力の強さもある。

りえ子は大学生になっても、単位を落としそうになったり、アルバイトの日を忘れてドタキャンしてしまったり、相変わらずな日々を過ごしている。そして1巻の第一話であれほど悲愴な別れをしたにも関わらず、頻繁に帰省し、ポン太を散歩に連れて行っているようだ。