鞄に二冊

少しでも空き時間ができると、本が読みたくなる。

佐野絵里子の新刊「時を翔る絵師」

時を翔る絵師 (eyesコミックス)

時を翔る絵師 (eyesコミックス)

著者から贈呈していただいた。僕にとっては非常に珍しい出来事である。

風景だけでなく、情景から音楽、人の気持ちに到るまで絵に切り取ってしまう天才的な絵師の物語。絵師の物語というより、絵師にもろもろを託そうとする依頼人の物語というべきか。

なぜか同じ絵師が平安時代の初頭から鎌倉時代、江戸時代まで存在するが、事情の説明はない。なくても不思議に納得させられる。

当時、絵師に絵を依頼するなど相当に身分の高い人しかできなかったわけで、そういう意味で時の権力者を側面から描いた物語になっている。それが本書の真骨頂であろう。

漫画家が絵師の物語を描いているわけで、一つ一つの場面や解釈について、作者自身はどう思っているのだろう……と想像すると、さらに興味が膨らむ。

こういう骨組だと、話はいくらでも続けられるのではないか。ぜひとも続編が読みたい。

巻末に著者自身が登場する解説漫画がある。この作者には珍しい。そういう点でも注目の書。

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(別ブログより転載/original : 2009-10-25)