鞄に二冊

少しでも空き時間ができると、本が読みたくなる。

「意味がわかるとゾクゾクする超短編小説 54字の物語」

  • 氏田雄介「意味がわかるとゾクゾクする超短編小説 54字の物語」(イラスト:佐藤おどり)

一時期、54文字専用の原稿用紙を使い、物語を作ってSNSに投稿するのが流行っていたことがある。その時の投稿作品の中から秀逸なものを集めた作品集かと思った。実際は、本書に収録されているのはすべて氏田雄介の作品とのことだった。

どの作品も水準以上の面白さがある。このような作品は(僕には書けないのでやや失礼な言い方かも知れないが)ちょっとしたアイデアがあれば2~3作書くのはできるかも知れない。しかし、何十作ともなると(本書の収録数は90作品)、よほどの才能がないとできない。星新一も、まさか後年このような超々ショートショートのジャンルが開拓され、こうした新たな才能が生まれるとは予想だにしなかったのではないか。

佐藤おどりのイラストもなかなかいい。絵の説明は難しいが、爽やかである、現代風である、飽きがこない、など、好感を抱いた。小説の感想を述べる時に普通はイラストには言及しないが、気に入ったため、今回は敢えて触れることにする。

唯一残念なのは、一作ごとに作者自身による解説がつくことだ。どの作品も解説を読まないとわからないほど難解ではない。それなのに作品本体の何倍もの量の説明がつくのは興醒めだ。そもそも作品本体が59文字しかないからちょっと何か書いたら軽くその何倍にもなってしまうのは致し方ない面もあるが。


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