鞄に二冊

少しでも空き時間ができると、本が読みたくなる。

「1・2の三四郎2」1

「1・2の三四郎2」はヤングマガジンで1994年~1998年に連載された。前作が1978~1983年の連載なので、連載終了後10年以上経ってから発表された続編だが、時系列では前作の5~6年後ぐらい? から物語が始まる。*1

これは隠れた名作である。「隠れた」というのは、連載中は三四郎自身が(三四郎の着ぐるみを着た人が)プロレスのインディー団体を取材に行く様子がグラビアに何度も掲載されるなど、それなりには話題にはなったけれど、連載終了とともに人々の口の端にのぼることもなくなってしまったからである(定量的な観測ではなく印象で述べているに過ぎないので、間違っているかも知れないのだが)。

単行本にして全6巻と、あっさり終わってしまったことが主要因ではないかと思われる。前半はいったんプロレスを引退した三四郎が再起するまでに尺が割かれるが、復活してからは美鈴拳と丸亀鶴丸との試合がちょっと印象に残る程度で、山場は赤城欣市戦のみ。三四郎以外のメンバー(西上馬之助とか成海頁二とか)の試合はほとんど描かれない。これでは、なかなか人口に膾炙するのは難しいのだろう。

しかしそのストーリーは実によくまとまっており、小林まことの作品の中でも屈指の出来だと思う。また、ラストシーンの苦手な小林まことの作品の中で、出色の出来であり、「名作」と呼ぶにふさわしい作品であると、ここで強調しておきたい。



漫画・コミックランキング

(2020/6/2 記)

*1:作品を読み返したら、三四郎と美鈴拳の試合はデビューから9年後だと明記されていた。ということは、物語の冒頭の時点で前作から7年が経過していたことになる。