2018年8月20日刊。
エピローグも一話とカウントして全九話の連作短編集。とはいえ、毎回必ず事件が起き、謎が解けるというわけではなく、とても短い話もあり、面白い構成だと思った。第一話のみ雑誌(「小説NON」2018年9月号)に掲載され、あとは書きおろしだという。なるほど、長編小説と思って読めばいいのか(もう読み終わったけど)。
日常ミステリーだが(いや、人も死ぬが)、必ずしも謎解きがすべてではなく、大学生の御牧のひと夏の経験という青春物語でもある。「こぶし野の虎」といわれた歴史上の人物に関する御牧の考察は素晴らしい。
探偵役の矢上教授のキャラがはっきりしない。本作で初登場というわけではなく「矢上教授の午後」に続く二作目ということらしい。そちらも機会があれば読んでみたい。
文庫本では「矢上教授の夏休み」とタイトルが変わったようだが、元のタイトルの方がいいな。「御牧咲の夏休み」ならわかるが。