鞄に二冊

少しでも空き時間ができると、本が読みたくなる。

「朝日のようにさわやかに」

2010年5月28日刊。表題作「朝日のようにさわやかに」を含む全14編の短編集。

蔵書の再読。といっても、ほとんど記憶にない。当時は買っただけで読まなかったんじゃないだろうか。

近年は短編集といっても連作短編が多く、連絡ではなくても雰囲気が似たものを集めたもの(「カタブツ」とか)も多く、本書のようにあちこちで発表した短編が一冊分になったから出しましたという、テーマも文体も様々な作品を寄せ集めた短編集は久しぶりだ。そもそも恩田陸の作品になじみがない。その上作品ごとの差が大きいから戸惑いもあった。

いや、統一テーマがないこともない。それは「さわやか」な作品がひとつもないこと!

「プロ野球 vs メジャーリーグ 戦いの作法」

2014年4月16日刊。

こういう本を読みたかったの。著者自身がどのような選手生活を送っていたのか、また、同僚の選手や監督、コーチなどのエピソードがわかるようなもの。とても面白く読んだ。

「最高のコーチは教えない。」を読んだ時、吉井は冷静な人なのかと思い込んでいたが、仰木監督に言われて腹が立ち、監督室の机をひっくり返したことがあるとか、かなりの激情家なのだと知って驚いた。本書では、メジャーでも監督に殴りかかろうとしたことがあるなどのエピソードが出て来る。すごい人だ。

MLBでは通訳なしだったこともあるようで、英語には苦労したというが、それで仕事がきちんとでき、生活もできたのだからたいしたものだ。

「戦国小町苦労譚」6

  • 原作・夾竹桃、平沢下戸、作画・沢田一「戦国小町苦労譚 農耕戯画」6(アース・スターコミックス)

2020年4月11日刊。「デジタル版コミックアース☆スター」2019年10月~2020年2月掲載。

義昭を奉じて上洛した信長は京の治安維持のため警ら隊5000を置き、その総指揮を静子に命じる。現代の「技術」はあまり関係なかったが、生真面目で思い悩む可児才蔵に、「完璧を目指すよりまず終わらせろ」という、マーク・ザッカーバーグFacebook創始者)の言葉を贈ってよい方向にまとめたのが、現在の「知識」を生かしたことになるか。ひとこと言っただけで人が変わるなら誰も苦労はしないのだが。

とにかく信長の京での人気は鰻登り。そんなところへ仕官を希望してきたのは、前巻最後に登場した、静子のことを知っているぽい男二人(足満、みつお)だった。職人として採用されたが、これに五郎を加えた三人を濃姫が専属の料理人として連れて行ってしまう。濃姫は(静子の作った)本来この時代にはないはずの野菜を与えて料理を命じ、命じられた男はさくさくとチャーハンを作る。

ところで本作ではたびたび米が出て来たが、それは赤米か黒米だったらしく、静子はようやく白米の育成に成功。信長に試食してもらい、量産の許可をもらう。

静子の自宅に濃姫が、足満、みつお、五郎の三人を連れてやって来る。足満は、静子がかつて家族同然に接した足満おじさんだった。みつおの乗っていたバスが事故を起こし、その場に足満と静子が居合わせた。その時にタイムスリップが起きたらしい。

足満は記憶喪失の間者で、気の毒に思った静子の家が引き取って一緒に暮らしたとのことだが、もしかして足満はもともと戦国時代に人間で、タイムスリップで現代へ行ったのでは……?

静子の提案で、二人は料理人ではなく、みつおは織田領で展開する畜産の牽引を、足満には神主をやってもらうことになる。その了解を取りに足満が濃姫のところへ行くと、濃姫は問いかける。お前は静子と同じ世界から来たというが、静子とは異質なものを感じる、と言う。静子が知らないか、知っていても使いたがらない知識を、足満が持っているのではと。それは、人を殺す技術――

タイムスリッパ―が他にいて、その人たちが接触し始めると物語が大きく動く。これは「信長協奏曲」でもそうだったが、今回はもともとの知り合いだった。その上、多重タイムスリッパーの疑いも!?



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「平和の国の島崎へ」5

  • 原作・濱田轟天、漫画・瀬下猛「平和の国の島崎へ」5(モーニングコミックス)

2024年3月22日刊。発売日に即、購入。

SATAと名乗る少年が本巻の主人公だ。祭りの日にお神輿を担ぎたいと申し出て断わられ、何とか町に溶け込みたいと、ボランティアでゴミ拾い活動を始めるも、迷惑だからやめろと言われてしまう。次に壁の落書きを消そうとするが、自分で描いたのではないかと疑われる。何やらかわいそうだが、本気でゴミを拾って町をきれいにしようと思っているわけではなく、そのため掃除をやめると掃除用具をそこら辺に捨てていく。そういうところを町の人は見ているので、信用されないのである。

島崎は彼らに見捨てておけない何かを感じ、何かと親切にしてやる。SATAも島崎には懐く。

実はSATAらはLELの下部組織に所属し、戦闘員としての訓練を受けているのだった。子どもだけで地元のヤクザの事務所に殴り込みに行くことを命令され、少数の少年だけでヤクザを壊滅させてしまう。が、ヤクザ組織にバレて、さらわれてしまう……

島崎はSATAにかつての自分を見た。SATAに関わると自分も危険だし、周囲も危険に巻き込むリスクがあるのは承知の上で、彼をほっておくことができない。島崎は彼を救えるのか。

島崎がだんだん人間性を取り戻していくところが泣けるが、彼は本当に近い将来戦場に戻ってしまうのか。

「戦国小町苦労譚」5

  • 原作・夾竹桃、平沢下戸、作画・沢田一「戦国小町苦労譚 農耕戯画」5(アース・スターコミックス)

2019年10月12日刊。「デジタル版コミックアース☆スター」2019年3月~9月掲載。原作はライトノベル

静子は蒸留酒を作るために蒸留器を製造、信長にアルコールの説明をしたところ、量産するよう命じられる。

尾張三河の間で大規模綿花栽培の正式な協定が結ばれ、その話し合いが行なわれた。知識を秘匿・独占するのが当然の時代に有益な情報を共有しようとする静子に疑念の声があがるが、静子は「綿花を広め、子どもの死亡率を減らし、百姓一揆を防ぐため」と即答。そしてデモンストレーションとして綿花製の布団を作成し、寝てもらう(現在のような布団が登場したのは明治以降で、それまでは寝むしろ・寝ござで「ふかふか」とは無縁だった)。大規模に綿花栽培を行なえばいずれ他国にも知られるだろうが、「天下統一されたのちの世で」みなが冬を暖かく過ごせたらと語る静子だった。

さらに静子は硝石(すなわち火薬)の開発に成功(これまではもっぱら南蛮からの輸入に頼っていた)。

信長は足利義昭を奉じ、ついに上洛。従わない六角氏に戦を仕掛ける。静子にも召集がかかる。ここで静子は「兵站」について説く。これまでの戦は荷物は小荷駄で運び、食糧が尽きれば戦は終わるというものだった。兵站が導入されれば継続的に戦闘が可能だと。それを聞いた信長は、静子のこれまでの行動はすべてこのためだったかと早合点する。農業の改革を行ない安定した制作力を手に入れ、国の生産力を高め、最後に「兵站」を組み込む。これぞ「富国強兵」と……

さらに静子は持ち運び式のシンプルな「火起こし」を広める。アルコール+簡易携帯火起こしのセットで、信長は六角氏を一日で落とすのだった。

その戦の様子を窺っていた男二人が、史実より一日早い、それにこの時代にはないはずの農作物が終わりから出回っている、静子は織田のところにいる、と呟く……。この二人は前巻のラストに登場した人物か? なぜ静子の存在を知っている?



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「さっちゃんとけんちゃん」(既刊11巻)

  • 葵日向「さっちゃんとけんちゃん」1~11

1巻は2019年11月24日刊、11巻は2020年12月12日刊。ネットで一話ごとに配信され、それをまとめたもの。現在、kindle版が無料で読める。

「さっちゃんとけんちゃんは今日もイってる」は本作をリメイクしたもの。従ってかぶる話も多い。なお「さっちゃんとけんちゃんは今日もイってる」には山田あかりという隣人が登場するが、本作は二人以外(名前のついた人は)登場しない。

登場人物は二人、場所は二人の部屋であることが多く、テーマはエッチをどうするという、いわばシチュエーションドラマである。不思議なことに、これが飽きない。いくらでも読んでいたいと思う。

本作の続編を楽しみにしていたが、商業連載が始まった以上、続きが出ることはないのだろう。中身は面白いが、率直なところ、各巻30ページ前後の薄い本である上、表紙がすべて同じ絵であり、巻数表示もないため、通読しにくい。合本が出てくれないものか。


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「さっちゃんとけんちゃんは今日もイってる」2

  • 葵日向「さっちゃんとけんちゃんは今日もイってる」2(ヤングジャンプコミックス)

2023年12月19日刊。

一巻では「幸子」「賢太」しかわからなかったが、17話で幸子の姓が飯田であること、おまけの描きおろしで賢太の姓が東條であることが判明。また19話ではさっちゃんがアルバイトをしていることに触れられるが、20話で二人とも大学生であることが明らかにされた。

実は本作にはベースになる話がある。続編ではなくリメイクの扱いになるようで、そのため慎重に設定を確認している。

それにしても、夏休みは(協力して)レポートに取り組んだり、真面目に勉強している様子も伺える。自分だったら、こんな恋人がいたらレポートなんかほったらかしにして毎日遊び倒すに決まっている。なんなら授業にも出ないだろう。偉い。



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